【経営者必見!】紛争になりにくい定年後再雇用の注意点とは?

Labor Issues

1.はじめに

2021年4月1日、改正された高年齢者雇用安定法が施行されました。この改正は、少子高齢化が進展する中で、高年齢者の就業機会の確保を目的として行われたもので、企業に対して、70歳までの定年年齢引き上げなどを「努力義務」として課すものです。
あくまで努力義務とされていますので、引き続き、各企業の「義務」として適用されるのは、改正前のルールとなります。

さて、改正前のルールは、2013年に施行されて8年経ちますので、経営者の皆様も当たり前のこととして認識されていると思います。そんな中、継続雇用制度(多くの企業では「定年後再雇用制度」が採用されていますので、本稿ではこちらを対象とします。)の運用に伴う色々なトラブルのご相談も増えてきていますので、法改正が行われた今、改めて同制度のルールを確認し、トラブル予防に役立てていきましょう。

2.定年後再雇用制度のポイント

高年齢者雇用安定法においては、希望するすべての従業員(能力等で選別することも許されません。)に、65歳までの雇用の機会を与えなければならない、とされています。
その方法としては、定年制の撤廃や定年年齢の65歳までの引上げも考えられますが、多くの企業では、定年は60歳などにしたまま、「定年後再雇用制度」を設けるという方法がとられています。

この定年後再雇用制度の運用にあたっては、同制度が創設されてから、いくつかの裁判が行われ、注目すべき裁判例が出ています。弊所での相談事例やこれら裁判例などを踏まえると、同制度の注意点として、以下の点が挙げられます。

(1)労働条件の定め方における注意点

(2)無期転換ルールへの対応方法

(3)更新拒絶の難しさ

3.定年後再雇用制度の注意点

(1)労働条件の定め方における注意点

まず原則として、業務内容や給料、勤務日数などの労働条件については、定年前と同じでなくてもよいこととされています。しかし、当然ですが、企業側が勝手に労働条件を決めることはできません。また、労働者との合意ができるとしても、いわゆる同一労働同一賃金(パートタイム有期雇用労働法)には注意が必要です。

つまり、定年後再雇用された労働者が、定年前までと同じ業務を、なんら変わらずに続けている場合に、再雇用(有期雇用)だからと言って不合理に低い待遇とすることは許されない、ということです。

【参照条文】パートタイム有期雇用労働法第8条
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

そうは言っても、長期雇用を前提とする通常の労働者と、長期雇用を前提としない定年後再雇用の労働者を比較して、まったく待遇を同じにしなければならない、という結論にも違和感があります。この点について最高裁判所は、平成30年6月1日の判決で、定年前の正社員のときの年収と比較して2割程度の減額であれば、不合理とはいえない、と判断しました。

この判決は一つの基準を提示するものではありますが、実際には、業務内容の違いや責任の重さ、裁量の有無等によって、合理的な労働条件を検討しなければなりません。定年後再雇用の労働者について特に理由なく賃金を減額している、という経営者の方は、是非一度、弊所にご相談ください。

(2)無期転換ルールへの対応方法

皆様もご存じのとおり、有期雇用契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合は、従業員の申込みがあれば、期間の定めのない雇用契約に転換するという「無期転換ルール」が存在します(労働契約法第18条)。
実は、この無期転換ルール、定年後再雇用の場合も例外ではないのです。従って、60歳で定年、その後1年ごとに有期雇用契約の更新を繰り返し、通算して5年を「超えた」場合には、無期労働契約となり、雇止めをすることができなくなります。

対応方法の一つ目は、都道府県労働局の認定を受けて、無期転換ルールの対象外としておくことです。そのためには、「高年齢者の雇用管理に関する計画」を作成して労働局に提出し、認定を受けなければなりません。雇用管理のための具体的な取り組みや就業規則の整備が必要となる場合もありますので、詳しくは弁護士にご相談ください。

二つ目は、再雇用の契約期間の設定です。上記のとおり、無期転換ルールは有期雇用契約が通算で5年を「超えた」場合に適用されるものですので、5年ちょうどであれば適用されません。定年後再雇用の契約期間が1年とされ、それがきっちりと運用されていれば、4回更新しても通算で5年を「超える」ことはありませんので、しっかりと確認しておきましょう。

(3)雇止めの難しさ

最後に、定年後再雇用をした労働者の雇止めについて検討します。定年後再雇用をしたはいいが、勤務状況等に問題があり、65歳まで継続雇用したくない、といった場合は雇止めを検討することになりますが、もちろん、いわゆる雇止め法理が適用されます。

雇止め法理とは、雇止めを一定の場合に制限する法理(労働契約法19条参照)です。
A:実質無期契約型(同条1号)
B:期待保護型(同条2号)

のいずれかに該当する場合、同法理が適用され、その結果、更新拒絶により契約を終了させるためには、解雇法理と同様の規制を受け、客観的合理的理由が存在し、社会通念上相当なものでなければなりません。
そして、継続雇用制度が存在する以上、定年後再雇用の労働者については、通常の契約社員の場合と異なり、65歳までの雇用継続は制度上の目標とされており、これに対する期待は合理的と考えられます。

これらのことから、客観的合理的理由の有無を確認するために、定年後再雇用を行う際に、更新基準を明確に定めておく方法が考えられます。年齢以外の理由として、能力や勤務状況に関する更新基準を定め、未達であった場合には、雇止めとする、という方法です。この更新基準については、定年後再雇用の雇用契約締結時に定める必要がありますのでご注意ください(労基法施行規則第5条第1項第1号の2)。

4.さいごに

今回は、定年後再雇用に関するトラブルを防止するために、同一労働同一賃金への配慮、無期転換ルールへの対応、雇止めに際しての注意点について説明しました。
定年後再雇用は、労働者にとってみれば、年金の支給開始年齢の引上げや、老後2000万円問題などもあり、自身の生活や老後の生活を守るために非常に重要な制度です。企業側としても、労働者の希望に応えつつ、適切に運用していかなければなりません。

弊所には、特に経営側を中心とする労働問題の経験豊富な弁護士が多数所属しておりますので、定年後再雇用制度の設計や運用についてお悩みであれば、まずはお気軽にご一報ください。

 

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