【親なきあとシリーズ②】兄弟の公平な遺産配分を目指した事例

相談者

家族構成:母、長男、次男(軽度の障害あり)
相談者:母(60歳代)

相談経緯・依頼前の状況

相談者は、軽度知的障害のある次男と一緒に暮らしており、長男は一般企業に就職してひとり暮らしをしている。相談者が亡くなったあとの次男の生活、特に財産をどのように準備しておけばいいのか、また次男のことで長男に負担をかけることにならないかと、不安を抱いていた。
相談者が参加した親なきあとセミナーで講師をしていた弊所弁護士に対して、個別相談の申し込みがあり、個別相談に対応することとなった。

解決までの流れ

弊所において相談者の希望や、子らの生活状況について聞き取りを行いました。もちろん、相談者の資産状況、次男の資産管理能力、及び将来の次男とのかかわり方に関する長男の意向等についても確認しました。
聞き取れた内容としては、相談者は自宅の不動産と収益物件(区分マンション)を2部屋、その他金融資産を保有しており、複数の生命保険にも加入していることがわかりました。
また、次男の障害は軽度であり、簡単な買い物を含む社会生活は一定程度自身で行うことができることもわかりました。ただし、以前就労した際にはすぐに退職してしまうなど、就労には困難が伴うほか、掃除や片づけが苦手という側面も見えてきました。
相談者の意向としては、できるだけ公平に財産を残してあげたいが、自宅をどちらに相続させればいいのか、収益物件からの収益を次男の生活費に充ててはどうか、といったことを考えていらっしゃいました。
弊所弁護士から、ご自宅は実際に住む人に所有していただくのが安定的であること、収益物件の管理は複雑であるため、長男に所有していただくのが適切と思われることなどを助言し、遺産分割協議の手間やリスクを回避するために、遺言の作成をお勧めしました。
相談者も納得し、長男には収益物件、次男には自宅を遺すことにし、金融資産は半分ずつ兄弟で分ける内容の遺言(公正証書)を作成しました。金融資産については、上記のとおり税金分はとっておくものの、自分の将来の医療・介護にかかる出費や、余生を楽しく暮らすために使う資産として考えることにし、遺言も作成できたことで、とても身軽な気持ちになったと仰っていました。

解決のポイント

親なきあとシリーズ①でもご紹介したように、遺言を作成していない場合、残された家族は遺産分割協議を行わなければなりません。そこには、家族の関係が悪化するおそれや、特別代理人・成年後見人の選任が必要になり柔軟な分け方ができなくなるおそれが伴います。これを回避するためにも、遺言の作成は非常に重要なポイントです。
お子さんに障害があると言っても、その障害の程度は人により千差万別です。障害の程度によって財産管理能力や就労能力も様々ですので、その方の状況に合わせた将来設計が必要です。
財産を公平に遺してあげたいと考える親御さんは多いですが、計算上の公平性を厳密に追求しようとすると、不動産などが含まれる場合にはこれが実現できず、次のステップに進めなくなってしまうこともあります。ある程度の公平性が実現できれば、あとは親御さんのお気持ちをお子さんたちにしっかり伝えておけば、大きな不平・不満が出ることはありません。
遺言を作成しようとすると、将来こうなったらどうしよう、もっと他の選択があるのでは、と色々なことに頭を悩ませてしまいます。将来を確実に見通すことはできませんので、まずは今の状況を素直に見つめて、今の状況にフィットした遺言を作成しましょう。将来、状況が変わったのであれば、遺言もそれに合わせて、作り直すことができます。

解決するまでに要した期間

4ヶ月程度

当事務所ならではのサービス(専門家目線でのアピールポイント)

弊所グループ法人には、相続対策を専門とする弁護士と、資産税、特に相続税分野を専門とする税理士が在籍しています。そのため、相続争いの回避については弁護士が主導し、相続税負担が想定されるご家庭に対しては、専門の税理士が試算や対策を提供することができます。
弊所弁護士が代表理事を務める「一般社団法人あしたパートナーズ」は、司法書士や社労士、福祉事業者や行政など、幅広いネットワークを有しておりますので、親なきあとの財産に関するご相談のみならず、障害に関する幅広いご相談をお待ちしております。

伊藤 良太 弁護士法人フォーカスクライド パートナー弁護士執筆者:伊藤 良太

弁護士法人フォーカスクライド パートナー弁護士。
中小企業の事業承継・相続対策及び資本政策を中心として、契約・労務・ガバナンス等の一般企業法務や、M&A、不動産案件も取り扱う。
事業承継については、経済産業省での執務経験も活かして、法務・税務横断的な提案を得意とし、事業と家族の双方に配慮した円滑・円満な承継に注力している。

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