事業譲渡後に生じた物件の賃貸借に関する紛争で,金7000万円の債権回収し,適切に賃貸借関係を整理することに成功した事例

相談企業の業種・規模

業種:小売店事業
規模:関西圏にて展開
相談者:経営者

相談の経緯・依頼前の状況

依頼者は,小売店事業を展開していましたが,相手方に対して,当該小売店事業を事業譲渡しました。
この事業譲渡の計画は複雑でしたが,本件との関係では,小売店事業の譲渡を行うとともに,多数の店舗や作業場等の物件を,依頼者より相手方に対して賃貸することとなっていました。
しかしながら,事業譲渡が実行されるまでに物件の賃料交渉がまとまりませんでしたので,事業譲渡実行時点において賃料交渉が終了していた物件のみ賃貸借契約を締結し,残部の物件は引き続き賃料交渉が行われることになりました。
依頼者としては,事業譲渡後約半年が経過した時点では賃料交渉を終えた認識でしたが,相手方は,残部の物件に関する賃料の支払いを一向に行いませんでした。
なお,事業譲渡実行後に,賃料決定に関する合意書等,双方の意思が明確に示された書面は見当たりませんでした。
そのため,未払賃料の支払請求を行うべく,当事務所への依頼となりました。

解決までの流れ

ご依頼時に,事業譲渡の交渉過程に関する資料を確認したところ,賃料交渉がまとまっていなかったことをはじめとして,事業譲渡契約締結時に未解決となっていた事項が種々見受けられました。
しかし,事業譲渡契約において,未解決事項が何であるかの確認を行った記載はなく,未解決事項の全体像が不明瞭でした(事業譲渡後に生じた種々の紛争は,事業譲渡契約書及び前述した賃貸借契約書の甘さに起因したものであると考えられました。)。
そのため,まずは,事業譲渡契約に基づき実現された権利関係を整理したうえで,未解決事項の整理を行いました。
その際,未払賃料が生じている物件の特定を行いました。なお,他の未解決事項についても,別途訴訟,調停等を用いて解決を図ることになっています。
また,事業譲渡契約締結後に作成された資料を確認すると,相手方は,賃料が決定されておらず,いまだ賃料交渉を行っているという認識であるように思われました。
そのため,賃料交渉に関する資料をピックアップしたうえで,賃料合意が成立していることを主張立証するために必要な事実関係を精査しました。
物件の整理,主張立証に関する精査が終了した段階で,早々に訴訟提起を行いました。訴訟では,やはり,相手方より,賃料合意が成立していないとの反論がなされました。
そのため,事業譲渡契約前後の交渉に関する資料を証拠提出するという方針で訴訟を進めていました。
ただ,時間が経つと未払賃料額が膨れ上がっていきますので,早期の解決が望まれました。
そして,賃料の合意に関する主張立証が一通りそろった段階で,裁判所より和解の提案がありましたので,早期解決を目指して和解交渉を行うことになりました。
和解交渉では,未払賃料の支払いを行わせることと賃料合意に争いがある物件の賃料を合意することに着目して,裁判所に提案を行っていました。
当初,相手方は,資力の問題があるとして未払賃料に対応する和解金の減額を要望していました。
しかし,当事務所において,賃料の合意がなされていなかったとしても無断占有であることに変わりはなく,賃料相当損害金支払請求を行うことが可能であること(訴訟では,予備的な主張としてその主張を行っていました。),小売店事業の売上金を仮に差し押さえることも検討されることを示唆することにより,相手方に譲歩を引き出すことができました。
その結果,未払賃料に関する解決金については,金7000万円の支払い(一括払い)を認めさせることができ,賃料決定については依頼者に有利な賃料で賃貸借契約を締結することができました。

解決のポイント

・事業譲渡契約及び賃貸借契約により混乱した権利関係を適切に分析することにより,相手方に対して行う請求の内容を整理することができ,適切な訴訟活動を行うことができました。
・仮に賃料合意がなされていないとの判断になった場合,賃料の合意は訴訟外の交渉により行わなければなりませんでした。訴訟外の交渉が長期化することは容易に想定できましたので,裁判所での和解において,賃料の合意を明確にすることにも注力を置くことになりました。
・和解交渉の際,予め仮差押対象財産を調査し把握しており,すぐにでも仮差押えができる状態を整えていました。また,当該対象財産の仮差押えは,相手方の事業に大きな影響を与えるものでした。この仮差押えを示唆することにより,相手方が解決金額の引上げに至ったと考えられます。
・賃料額の決定及び賃料の支払いは,事業譲渡契約及び賃貸借契約にて合意に至っていれば契約に基づきなされるべきことでしたので,相手方がこれを真っ向から否定するとは考えられませんでした。そのため,和解交渉で,的外れな提案を行うこともなく,相手方にとっても受け入れ可能な内容の和解を提案することができました。その結果,依頼者に有利な形で,早期に紛争を解決することができました。
未払賃料額が多額にわたり,かつ相手方が支払を行う姿勢を見せませんでしたので,早々に訴訟提起に至りました。
賃料の合意については,これを決定した旨明確に記載された書面はありませんでしたが,物件を使用していた事実は相手方の認めるところでしたので,無断占有として賃料相当損害金が認められることは明らかでした。
賃料の合意に関する主張立証が一定程度なされた段階で,和解協議となりましたので,賃料額について争いがあった物件の賃貸借契約の締結等紛争の一挙解決を目指すことになりました。
和解交渉においては,相手方において物件を使用する必要性があること,相手方の財産を調査,検討した上で仮差押手続きの存在を示唆したことから,交渉を優位に進めることとしました。
債権回収を含む案件では,単に勝訴判決を得ることがゴール地点ではありません。
当事務所では,債権を実際に回収するというゴール時点(民事執行手続)から,支払いを請求すべき権利の決定,訴訟追行方針の決定を行うことができます。
また,当事務所では,法律上認められうる支払請求権を裁判所において認めてもらうべく活動することは前提として,依頼者が抱える紛争の全体像を分析し,可能な範囲で最良の解決を目指すことができます。
さいごに,本件の発端は,事業譲渡契約及び賃貸借契約を締結する際の検討が甘かったことにあります。
当事務所では,事業譲渡におけるデューデリジェンスや事業譲渡契約書作成も行っています。そのため,事業譲渡後に本件のような紛争が生じないようにするための対策を講じることも可能です。

解決までに要した期間

依頼を受けてから2年(新型コロナウイルス感染症感染拡大により裁判手続が停止していた期間も含みます。)

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