【親なきあとシリーズ③】浪費癖のある子がいるご家庭の事例

相談者

家族構成:父、母、長男(浪費癖あり)、次男
相談者:両親(いずれも70歳代)

相談経緯・依頼前の状況

ご両親は東京近郊の地主で、自宅周辺に相当程度の土地を所有し、宅地や事業用地として賃貸するなど、順調な資産管理を代々行ってきた。同居する長男は40歳代で独身、仕事も長続きせず、浪費癖がある。何らかの障害が疑われるものの、診断を受けたことはなく、障害年金も受給していない。次男は一般企業に就職して妻子とともに、独立した生計を営んでいる。
最近、ご両親が長男から聞いた話では、詐欺的な商法が疑われる自称セールスマンと交友関係を有しているようであり、その背後には反社会的勢力が存在しているような話も耳にした。ご両親としては、なかなか仕事が続かない長男のために経済的な手当を準備したいものの、浪費癖があり、交友関係にも不安があることから、具体的にどのような準備をしておくべきか、不安を抱いていた。
ご両親が不動産の管理や仲介を依頼していた不動産業者に相談したところ、弊所弁護士の紹介を受け、個別相談を行うこととなった。

解決までの流れ

弊所において、ご両親の資産内容、ご子息らへの財産の配分方法に関するご希望、ご長男の性格や経済状態、ご次男の生活状況などについて聞き取りを行いました。
聞き取れた内容としては、ご両親はご自宅の土地建物の他に複数の土地を所有しており、それらは上記のとおり賃貸されて相当額の賃料収入が発生していました。また、その他にまとまった額の金融資産も保有されていました。
ご長男については、浪費癖があり、ご両親から渡される生活費をすぐに使ってしまう、飲食店に行くと見ず知らずの客にも奢ってしまうといった状況でしたが、いわゆる意思能力には問題がなく、日常の買い物や生活も一人で困ることはないとのことでした。
ご両親としては、ご長男に高額な財産を残すことには躊躇があるものの、ご次男とできる限り公平に分配したいというご希望があり、ご長男への財産の「遺し方」に工夫が必要であることがわかりました。
弊所弁護士から、ご長男への財産の遺し方については、資産を「ロック」する方法が考えられる旨ご案内し、家族信託、及び生命保険信託を組み合わせる方法を提案しました。併せて、遺産分割協議の手間やリスクを回避するために、遺言の作成をお勧めしました。
ご両親も納得し、ご自宅は居住しているご長男に残す遺言(公正証書)を作成し、収益不動産はご次男を受託者とする信託(認知症対策も含む)を活用して受益権を配分、金融資産は生命保険信託を活用してご長男に長期間分割して保険金が支払われるように設計しました。その他、相続税の納税資金としてある程度の金融資産は一括して分配されるようにし、相続財産が多岐にわたることから、遺言において弁護士を遺言執行者としておきました。

解決のポイント

今回の事例では、ご長男に浪費癖がある、という特殊な事情がありましたが、そのような事情がない場合であっても、多額の相続財産が一度に相続人の手元に入ってしまうと、先のことを考えずに浪費に走ってしまうケースは少なくありません。そのため、信託や生命保険信託を活用して、流動資産が少額ずつ、継続的に給付される仕組みを作ることができます。
また、家族信託を活用すると、上記の事例ではご長男は単なる受益者でしかなく、収益不動産を管理・処分できるのはご次男だけという形を作ることができます。反社会的勢力の排除という観点からも、相続財産を信託によってロックすることは有益な方法と考えられます。なお、信託には登記が伴いますので、登記時の諸費用が発生することにはご留意ください。
相続対策でよく利用される生命保険は、通常は被保険者の相続発生時に一括で多額の金銭が支払われるものですが、生命保険信託を組み合わせることで、保険金が信託会社に信託され、月々必要な額だけ給付するという設計ができ、非常に有用です。
上記事例での収益不動産の信託は、ご両親の認知症対策という側面もあります。仮に自己所有のまま認知症になってしまうと、管理や処分を自らの意思で遂行できなくなり、不動産の有効活用や収益の維持が難しくなる場合も想定できます。これを事前に信託しておくことで、認知症になっても引き続き、受託者であるご次男がご両親のために管理・処分を行ってくれることになります。

解決するまでに要した期間

6ヶ月程度

当社ならではのサービス(専門家目線でのアピールポイント)

弊所には、相続対策を専門とする弁護士と、資産税、特に相続税分野を専門とする税理士が在籍しています。そのため、信託やその後の相続に伴う相続税額の試算や、より効率的な資産の承継方法に関するアドバイスを提供することができます。
また、信託を得意とする司法書士とも密に連携しており、初期相談や設計(弁護士)から登記(司法書士)、その後の管理(税理士)まで一貫した対応が可能です。
弊所弁護士が代表理事を務める「一般社団法人あしたパートナーズ」は、司法書士や社労士、福祉事業者や行政など、幅広いネットワークを有しておりますので、親なきあとの財産に関するご相談のみならず、障害に関する幅広いご相談をお待ちしております。

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