【親なきあとシリーズ④】親の任意後見契約を組み合わせた事例

相談者

家族構成:母、長男(発達障害)
相談者:母(70歳代)

相談経緯・依頼前の状況

相談者は東京近郊で長男と暮らしており、夫は既に他界されていた。長男は発達障害があり、就労も難しいため、障害年金を受給しており、金銭の管理や身の回りのことも含めて相談者が支援を行っていた。
相談者としては、自分が元気なうちは長男の支援は自分の手で行いたいと考えており、施設などの利用は考えていなかったが、70歳になり、健康への不安なども感じるようになってきていた。そこで、万一の場合に備えた準備をしたいと考えていたが、どのような準備をすればよいのかわからず、不安な日々を過ごしていた。
相談者が、自身の所属している障害者の子をもつ親の会が主催したセミナーで、弊所弁護士が代表理事を務める一般社団法人あしたパートナーズの存在を知り、ホームページからの問い合わせを経て、個別相談を行うこととなった。

解決までの流れ

弊所において、相談者の資産内容、年金や障害年金の状況、ご長男の財産管理能力等についてはもちろん、相談者のこれからの生活に関する希望や、親なきあとのご長男の生活に関する希望、ご長男の趣味や関心事、それに要する費用などについて聞き取りを行いました。
聞き取り結果を踏まえて、あしたパートナーズに所属するFPが相談者とご長男のキャッシュフロー表を作成し、年金と障害年金で十分に生活は可能であるものの、ご長男の余暇活動に充てる資金として、生命保険信託等の活用について提案を行いました。
ところで、相談者には近くに頼れる親族などがいなかったため、親なきあとの準備はもちろんですが、親あるあいだについても、ご本人が認知症になるなどした場合に備えた準備が必要ではないか、という課題が明らかになりました。
そこで弊所弁護士から、弁護士を後見人候補者とする任意後見契約の活用を提案することにしました。任意後見契約とは、委任契約の一種で、委任者であるご本人が、受任者(ここでは弁護士)に対し、将来認知症などで自分の判断能力が低下した場合に備え、自分の後見人になってもらうことを委任する契約です。
任意後見人がつけば、相談者が認知症になっても、相談者の財産管理や、施設入所時の契約などを後見人が代わって対応できますので、相談者も安心して老後を過ごせます。
また、相談者に万一のことがあった場合には、相続人が長男のみであるため、長男自身が相続手続きをしなければなりません。そこで、遺言を作成し、弁護士を遺言執行者として指定しました。

解決のポイント

任意後見契約は、その契約締結だけでは何も変わりはありませんが、締結後、認知症などになった場合には、親族のほか、任意後見受任者などが申立人となり、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てると、(要件を満たしていれば)監督人が選任され、この時点から任意後見契約が効力を生ずるという制度です。
今回の事例では、親なきあとの問題については、障害年金と一定額の生命保険契約で十分であることがわかり、それよりも「親ある間」の対策が重要であることが明らかとなりました。
ただし、任意後見人が管理をするのは相談者の財産であり、それをご長男のために支出するのにはハードルがあります。そのため、そのような場合に備えて、ゆくゆくはご長男にも成年後見人が必要になり得る、という想定はしておき、成年後見の申立てをしてくれる人を確保しておくことも重要です(今回は、将来入所を希望する施設の方と相談を重ねています。)。
なお、相談者がご存命のうちにご長男に成年後見人がついた場合には、ご長男は相続手続きを成年後見人に進めてもらうことができますので、必ずしも遺言執行者は必要ないことになります。このように、財産の遺し方だけではなくて、実際に誰が、どのように動くのかを想定して準備しておくことが重要です。
お子さんに障害がある場合、上記のように遺産の分け方の問題はなくても、遺言執行の問題が出てくることはよくありますので、遺言を作成される際には、遺言執行者の要否についてもご検討ください。

解決するまでに要した期間

4ヶ月程度

当社ならではのサービス(専門家目線でのアピールポイント)

弊所弁護士が代表理事を務める「一般社団法人あしたパートナーズ」は、親なきあと問題を専門にする相談機関です。毎年、数十組以上のご家族に対して、親なきあとの準備に関するアドバイスを提供しており、豊富な経験が蓄積しています。
また、同団体及び弊所は、税理士はもちろん、司法書士や社労士、福祉事業者や行政など、幅広いネットワークを有しておりますので、親なきあとの財産に関するご相談のみならず、障害、相続に関する幅広いご相談をお待ちしております。

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