在職中の従業員に退職勧奨を行った事例

相談企業の業種・規模

業種:イベント業
相談者:理事

相談経緯・依頼前の状況

従業員の人事を担当している理事より、ある在職中の従業員を辞めさせたいとのお話しがありました。具体的には、対象の従業員には能力不足等の様々な辞めさせたい理由があるが、辞めさせたい理由は就業規則上の解雇できる事由には該当しないと思うため、退職勧奨の方法により、対象の従業員には辞めていただきたいと考えているとのことでした。そこで、退職勧奨を行うにあたり注意すべきことを教えて欲しいというご相談を受けました。

退職勧奨の概要について

退職勧奨は、あくまでも会社が従業員に自発的な退職を促すことであり、強制力は全くなく、対象従業員に退職勧奨に応じる義務はありません。
このように、退職勧奨に応じて退職するかは従業員の自由意思に委ねられていることから、会社が退職してもらいたい従業員に対して退職勧奨を行うこと自体は、何ら違法行為ではありません。
しかし、退職勧奨の方法によっては、退職勧奨が違法となったり、退職の意思表示が取り消しになったりすることがあるため、実施方法には注意が必要です。

退職勧奨の実施方法

退職勧奨が違法となること等を避けるためには、下記の点に特に留意しながら退職勧奨を行う必要があります。

①勧奨の対象者が明確に退職の意思がないことを表明した場合には、新たな退職条件を提示するなどの特段の事情でもない限り、いったん勧奨を中断して時期をあらためる。
②退職勧奨の時間、回数、期間は退職を求める事情等の説明や、退職条件の交渉等に必要な限度にとどめ、長時間、多数回、長期間に渡る退職勧奨を行うことは避ける。
③対象従業員の名誉感情を害する、精神的苦痛を与えるような行為・発言は行わない。
④対象従業員に配転、懲戒処分等の不利益な措置を講ずることを暗にでも示さない。

 

その他の退職勧奨の方法・条件等について

退職勧奨の方法・条件としては、様々な方法が考えられますが、一般的に受け入れ易くなると考えられる退職勧奨の方法・条件としては下記の方法あります。退職勧奨を行う際の方法・条件の一つとして検討するとよいでしょう。
・退職時に数カ月分の賃金を上乗せして支給する、転職活動期間を十分に確保する等の対象従業員に有利な条件を提示すること
・あくまでも会社の業務内容や雰囲気にミスマッチがあることが勧奨に至った理由であることを伝えることにより、対象従業員を批判していると捉えられることを避けること
 

退職後の対応について

また、適切な退職勧奨によって、対象従業員が自ら退職を申し出た場合であっても、
退職勧奨の点以外における、対象従業員とのトラブル防止の観点から、秘密情報の不使用や、競業避止義務等を記載した退職合意書を作成しておくのが望ましいです。

当事務所でできること

当事務所では、労務に精通した経験豊富な弁護士が多数所属しており、退職の対応をはじめその他の労務問題も多く取り扱っております。労務問題についてご不安があればお気軽にご相談ください。

執筆者:弁護士法人フォーカスクライド

中小企業の企業法務を中心とした真のリーガルサービスを提供するべく、2016年7月1日に代表弁護士により設立。
「何かあった時だけの弁護士」(守りだけの弁護士)ではなく、「経営パートナーとしての弁護士」(攻めの弁護士)として、予防法務のみならず、戦略法務に注力している。
また、当法人の名称に冠した「フォーカスクライド」とは、「クライアント・デマンド(クライアントの本音や真のニーズ)に常にフォーカスする(焦点を合わせる)。」という意味であり、弁護士が常にクライアントの目線で考え、行動し、クライアントの本音やニーズに焦点を合わせ続けることを意識して、真のリーガルサービスを提供している。
なお、現在では、資産税に特化した税理士法人フォーカスクライドと、M&A及び人事コンサルティングに特化した株式会社FCDアドバイザリーとともに、グループ経営を行っている。

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