飲食店事業の譲渡に際して法務デューデリジェンスを行い,その結果を事業譲渡契約書に反映させた結果,その後生じた紛争を有利な立場で解決できた事例

相談者

業種:飲食店
規模:関西を中心に展開している。
相談者:経営者

相談の経緯・依頼前の状況

 依頼者は,相手方(法人)から,飲食店事業の譲渡を受けることとなりました。依頼者は,飲食店事業の譲渡を受けるにあたり,当該飲食店事業に関する法務デューデリジェンスを行うこととなりました。
 そして,当事務所へ法務デューデリジェンスの依頼がなされました。

解決までの流れ

(1)法務デューデリジェンスによるリスクヘッジ
 法務デューデリジェンスは,取引対象となる事業等に関する資料(契約書,株主総会議事録,許認可に関する書面等法的権利義務関係に関する資料が中心となります。)を精査したうえで,当該事業等に潜在する法的リスクを指摘することを目的として行われるものです。
 当事務所は,相手方に対して前述した資料の開示を依頼し,開示された資料に基づく検討を行うことを中心とし,法務デューデリジェンスを行いました。
その結果,種々の法的リスクが存在することが判明しました。その中の一つに,当該飲食店事業を構成する1店舗について,オーナーと相手方は転貸借関係にあるというものがありました。さらに,オーナーと賃貸借契約を締結している賃借人(相手方にとっての賃貸人)と,相手方との間には,賃貸借(転貸借)契約書が存在しませんでした。
 この点が問題視され,法務デューデリジェンス期間中に報告を行い,事業譲渡後の賃貸借関係に関する交渉を行うよう依頼者に依頼しました。そして,依頼者と相手方との間で交渉が行われました。その結果,事業譲渡契約において,①相手方がオーナーに対して,オーナーと前述した賃借人(相手方にとっての賃貸人)との間の賃貸借契約と同条件で,オーナーが直接依頼者との間の賃貸借契約を締結するよう働きかけ,事業譲渡契約締結後直ちに,これを実現すること,②相手方及び前述した賃借人(相手方にとっての賃貸人)において,当該店舗に係る賃貸借関係を解消すること等が相手方の義務として定められ,またこれらを行うことが可能であることを相手方において表明保証させることとなりました。

(2)紛争の発生及び解決
 依頼者は,事業譲渡契約締結後数か月待ちましたが,相手方は,結局,オーナーと依頼者との間の賃貸借契約を締結させることができませんでした。そのため,依頼者は,当該店舗に関してのみ,事業譲渡契約を解除(一部解除)し,損害賠償請求を行うこととしました。
 その後,依頼者と相手方はそれぞれ代理人を選任し(依頼者は当事務所に委任),交渉が持たれましたが,交渉は平行線となり,訴訟にて解決が図られることとなりました。
訴訟において,当方は,事業譲渡契約書の定めに基づき,前述した契約締結後の義務が履行されていないこと,表明保証違反があることを主張しました。相手方は,オーナーに対して交渉を行っており,依頼者との間で賃貸借契約を締結できる直前の状態であったなどと反論しましたが,裁判所は,事業譲渡契約締結後の義務違反及び表明保証違反を認める方向であるとの心証を開示しました。この訴訟は,当該心証開示も踏まえ,当方に有利な中,和解で解決しました。

解決のポイント

・当事務所において法務デューデリジェンスを行うことで,飲食店事業を遂行する上で必要不可欠な物件に関する権利関係を整理し,そのリスクを浮かび上がらせることができました。そして,事業譲渡契約において,依頼者に生じうるリスクに対応したリスクヘッジを行う旨の条項を設けることができました。
・事業譲渡契約においてこのようなリスクヘッジを行うことができたため,紛争が生じた後,契約書の定めに基づいて有利に訴訟を進めることができました。

解決までに要した期間

約1年半

当事務所ならではのサービス

 事業譲渡等のM&Aは,企業にとって重要な取引となります。そして,法的リスクは目に見えないものであるため,M&Aの対象となる事業等に存在するリスクは,法務デューデリジェンスを適切に行わなければ発見することが困難であるといえます。
 そして,法務デューデリジェンスにて発見された法的リスクに対するリスクヘッジを適切に行わなければ,当該リスクが顕在化したときに,大きな損害を被ってしまう可能性があります。
 M&Aは,重要な取引であることから,契約締結交渉が慎重に行われます。そのため,万が一訴訟となった場合においても,裁判所は,契約書に記載されている内容を重視する傾向にあると思われます(一例として,契約書の表明保証条項に「(売主が)知る限り」という一言を入れるか否かによって,表明保証違反が認められるか否かの結論が逆転する可能性もあります。)。今回の事案においても,「賃貸借契約と同条件」,「事業譲渡契約締結後直ちに」といった契約書の定めが重視されていたと当事務所では考えています。
 当事務所では,M&Aに関して法務デューデリジェンスを取り扱っています。なお,この解決事例では,事業譲渡における買主側でしたが,株式譲渡等他のM&Aに対応した経験があり,また,事業譲渡や株式譲渡の売主側の代理人として,法務デューデリジェンスに対応した経験もあります。
 M&Aを行おうとしている方は,買主側,売主側問わず,ぜひ当事務所にご相談ください。

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