”できるリーダー’’の習慣とは③(チームを活性化する7つのアクション)

 さて、別稿【”できるリーダー”の習慣とは①】では、越川慎司氏の著書「AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣」(2021年8月20日出版)を題材として、AIが突き止めた「トップ5%リーダーの意外な特徴」を5つご紹介するとともに、逆に「95%リーダー」がよかれと思ってやってしまう行動習慣を6つご紹介させていただき、さらに別稿【”できるリーダー”の習慣とは②】では、AIが突き止めた「トップ5%リーダーが実践する『8つの行動ルール』をご紹介させていただきました。
 
これに引き続き、本稿では、同著書から、トップ5%リーダーの『チームを活性化する7つのアクション』をご紹介させていただきたいと思います。
※以下は、同著書を要約した内容です。

<トップ5%リーダーのチームを活性化する『7つのアクション』>(同著書「第5章」より)

①「意外とよかった」を目ざす!

→ トップ5%リーダーは、より多くの行動を経験させて、成功体験と共に意識改革を行う。
 ・たとえメンバーが失敗をしても、責めることなく行動の回数を増やす(ex.営業では、成約率を高めることよりも、提案件数を増やすことを評価)。より多く行動したほうが学びは多く、次の行動に活かせると信じているため。
 ・失敗と成功、どちらかの判断をするのではなく、小さい失敗を積み重ねて最終的に大きな成功につなげることを目ざす。
→ トップ5%リーダーは、精神的にもハードルの低い、ちょっとした行動をメンバーにやってもらい、1対1の対話で感想を聞き、フィードバックすることで小さな意識改革を生み出すことを目ざしている。
→ トップ5%リーダーは、メンバーが行動を変えて何かを達成したら、必ず「承認」している。
 ・16万3000人を対象に、「あなたが働きがいを感じたのはどういうときでしたか?」という自由記入式の設問を設けたところ、その回答の多くが「達成」「承認」「自由」というキーワードに集約(特に「承認」の回答が最多)
 ・小さな行動実験で達成感を得て、リーダーが承認することで働きがいが高まる。こうして達成と承認を繰り返し、成長していくメンバーには、ご褒美として「(責任と表裏一体の)自由」が与えられる流れを5%リーダーはつくっていた。
 ・ちょっとした達成感を味わうことで、行動障壁が大幅に下がることを72%の5%リーダーが理解していた。
→ 1on1ミーティングの目的についてのアンケート結果
一般的な管理職の回答:第1位「コミュニケーションをとるため」 
第2位「関係をよくするため」
 5%リーダーの回答  :第1位「相手の行動を促すため」
→ 5%リーダーが相手の行動を促すための2つの法則

①相手をその気にさせること

 ・意義、目的、そして相手のベネフィットを伝え、テンションを高めるようにする。
いきなり自分が話すのではなく、テンションが上がるように相手に気持ちよく話してもらい、そこから少しずつ相手のベネフィットを伝え、興味を持たせる。
「これをやらなきゃダメだ」という一方的な指示ではなく、「これをやったほうがいいかも」と、ちょっとした気持ちよさで興味をそそる。

②最後に背中を押すと同時に、小さな実験を提案すること

 ・例えば、「来月1回だけ早起きしてみれば?」というような提案
→ さらに、5%リーダーは、行動を起こすことではなくて、行動変容を定着させることを目的としているため、必ず振り返りの時間を持つ。
 ・1on1ミーティングの対話で提案した「小さな実験」を行動したかどうかをカジュアルに聞き、そのとき、「やった」「やらない」の判断ではなく、やったときにどのような感情を持ったかを聞き出そうとする。
 ・約8割のメンバーが行動を起こした後に「意外とよかった」と答える傾向にある。この「意外とよかった」が、意識が変わったサイン。

②成功の後にWHYを繰り返す!

→ チームのリーダーとしては、一時的な失敗や成功で一喜一憂するのではなく、成功を
生み出す仕組みを作らないといけない。そこで、5%リーダーは再現性のあるパターンを作ろうとする。そして、再現性の有無は成功後の行動で決まる。
 ・5%リーダー :失敗したときは反省し、成功したときはその原因を探ろうとする。
一般的な管理職:成功すると、その達成感に満足し、内省をしていない。
 ・プロジェクトが成功を収めた後に内省をしている割合
 5%リーダー  :41%
一般的な管理職: 3%
 ・失敗したときは誰もが反省するため、行動に差が出るのは「成功した後」。
 5%リーダーは、成功後に、なぜ成功したのか、その原因が発生したのはなぜか…とWHYを繰り返して成功メカニズムを探り、再現性を高めようとする。

③暇なふりをする!

→ メンバーが「今ちょっといいですか?」と話しかけやすいようにする。
 ・リーダーへのヒアリングに対して、忙しさを口にした人の割合
 5%リーダー :113名中 0名
一般的な管理職:102名中 6割ほど
 ・5%リーダーの31%のカレンダーは15分刻みになっており、こまめにすき間時間がある。メンバーから「気軽に話しかけられる時間」を作るための工夫。
 ・出勤でもテレワークでも「今ちょっといいですか?」と言い合える関係性を作ることができれば、チームでの共同作業ははかどる。

④いきなり解決策を考えない!

→ 5%リーダーは、「そもそも」から考えて根本的な解決策を見つける。
 ・一般的な管理職:すぐにどうやって解決しようかと「HOW(方法)」を考える。
 しかし表層的な問題を一時的に対処したに過ぎず、同じ問題が発生する。
 5%リーダー :いきなり解決策の「HOW」を考えるのではなく、「WHY(なぜ)」を掘り下げて根本原因をみつけようとする。
 トラブル対応や課題解決のディスカッションをする会議で、5%リーダーの発言をAI分析すると、「そもそも」「つまり」「もともと」「さらに」が多く、本質的な発生原因を探ろうとしていることがよくわかる。
 ・「何が問題だったのか」「それはなぜ起きたのか」「なぜ防げなかったのか」と「なぜ?」を何度も繰り返していくことで根本原因に辿り着くことができる。
 ・5%リーダーは、メンバーにもHOWではなく、WHYを考えるようにコーチし、定期的な1on1ミーティングで、メンバーと一緒に問題の発生原因を考える。
 ・こうして思考の質を改善することで、その後の行動の質が改善していく。メンバーが自分で主体的に考えて動く「自走する組織」を作るには、このWHYの掘り下げプロセスが必須となる。

⑤指示代名詞を避け相手の記憶率を2倍にする!

→ 5%リーダーは、「イメージを共有」するために言葉を使う。
 ・自分が主役の「伝える」ではなく、相手が主役の「伝わる」を目指す5%リーダーは、視覚を意識して「伝わる工夫」をする。
 ・オンライン会議の発言内容の比較 
 5%リーダーは一般的な管理職よりも発言頻度が1.2倍多く、発言時間は0.7倍であった。
 ・しかし、言葉を端折りすぎて相手に伝わらないことを避けたいと考える5%リーダーは、丁寧な言語化と言葉選びに注意を払う。
 会議の発言をAIで文字起こしし、テキストマイニングという分析手法で解析したところ、5%リーダーは指示代名詞を使う頻度が極めて低いことが判明。
 ・その代わりに、5%リーダーは形容詞や副詞を一般的な管理職よりも20%ほど多く使っていることが判明。特に、事象や状況を説明するときに形容詞や副詞を多く使い、その情景が浮かんでくるような説明をしていた。自分の頭の中にあるイメージ(画像)と同じものを相手にもイメージさせることを目ざして言葉を選んでいる方もいた。つまり、5%リーダーは、言葉という手段を使って同じイメージを伝送し、相手の頭に思い浮かばせることを目ざしていた。
→ 指示代名詞をなるべく使わないというルールを一般社員や一般的な管理職にも実践してもらったところ、対話相手であるメンバーの満足度が上昇傾向となり、伝えた情報の記憶率が2倍以上になったケースもあった。

人間は、重要な情報は長く記憶し、重要でない情報は忘れるようになっている。
※人間の忘れるしくみを曲線で表した、心理学者のヘルマン・エビングハウスの忘却曲線
 ・20分後には42%を忘れ、58%を保持
 ・1時間後には56%を忘れ、44%を保持
 ・1日後には74%を忘れ、26%を保持
 ・1週間後には77%を忘れ、23%を保持
 ・1か月後には79%を忘れ、21%を保持

視覚や聴覚から得た情報は、まず脳の「海馬」に一時的に保存される。
しかし、その保存期間は2~4週間程度しかない。

情報が海馬にある状態で3回以上使われると、重要な情報とみなされて、側頭葉に移動し長期保管される。

「情報を使う」とは、書き出したり、声に出したり何かしらの筋肉を使って発信(アウトプット)することをいう。

⑥同情しないで共感する!

→ 5%リーダーは、メンバーと「共感・共創」関係を構築し、一緒に行動し振り返るサイクルをつくる。この「共感・共創」関係は、上下関係ではなく、お互いの成長を目指して支え合っているフラットな関係である。
→ このフラットな関係の中で「同情」という言葉はない。
 ・同情とは、目上の人が目下の人に対して抱く感情で、哀れみを持ち、相手の痛みを想像すること。同情は哀れみから始まり、感情自体をコントロールすることが難しい状態でもある。
 ・一方「共感」は、相互に信頼し合い、尊敬の中から生まれる感情の共有。
 ・フラットな関係の中で、相手に対して関心を寄せるのが共感であり、同情は相手よりは自分が持つ関心事であり、自分中心の捉え方と言える。関係性が近い場合は共感し合うことができ、関係性が浅い場合は第三者として傍観的に同情することになる。そのため、共感は人の関係性を深め、同情は関係を遠ざけると言える。
→ 5%リーダーは、この共感と同情の違いを理解している。雑談・相談によって信頼関係を構築し、距離感を縮めてお互いの時間を共有し合いながら一緒に考え、一緒に行動しようとする。
 

⑦相手のエネルギーを高める「ほめ方」をする!

→ 5%リーダーは、メンバーに対して興味・関心があることを表現する。
→ 一般的な管理職との大きな違い:ほめるポイントとほめ方
 ・5%リーダーは、メンバーの能力やセンス、行動をほめる。
 ・5%リーダーは、日頃からメンバーによく声をかけ、ちょっとした進捗や成長を認めてフィードバックする。
 ・5%リーダーは、自分からメンバーをほめるだけでなく、チームの同僚同士で励まし合うことも促す。
 ・5%リーダーは、第三者を通して相手をほめる間接承認をよく使う。
 間接承認を使うと喜びが倍増する2つの理由
 ①第三者の名前が思いがけずに出てくると、ポジティブ・サプライズ(予想外の喜び)となるため。
 ②「第三者からのフィードバックを集めてくれたなんて、リーダーはすごいな」「陰ながら自分のことをしっかり見ていてくれたなんて、嬉しい」と自分に対して興味・関心を持ってくれるリーダーに対して感謝の念を抱くため。
→ 5%リーダーは、1対1の対話の事前準備として、メンバーの勤務票や成果を見て、体調面や成長を確認している。1on1ミーティングも社内会議も、準備で8割決まると言ってよい。
→ 5%リーダーは、相手に改善を求めるフィードバック、つまりネガティブなフィードバックは最後に持ってくる。はじめに1つ2つ相手の良い点をフィードバックし、相手が聞き入れる体制を整えてからネガティブなフィードバックをする。
※心理学者のロイ・バウマイスターは、「1つのネガティブを打ち消すには、4つのポジティブが必要」だと言う。

 以上が同著書「第5章」の要約です。

 当事務所においても、従業員の1on1面談を最低月1回取り入れるようにしています。当該面談の中では、直近1か月の間で、従業員自身が「上手くいったと感じた点」をまず話してもらい、次に「改善したいと考えた点」を話してもらい、さらに「上手くいったと感じる点」については上手くいった理由(WHY)を、「改善したいと考えた点」についてはその根本原因(WHY)を一緒に掘り下げ、これらを踏まえて、次月までの具体的行動目標を一緒に立てるように心がけています。その上で、1か月後の面談では、前月に立てた目標に関するフィードバックを相互に行うということを仕組化しました。
これにより、従業員1人1人が、毎月、目的意識をもって行動するようになり、かつ、小さな成功体験を実感しやすくなったように思います。

 紹介させていただきましたトップ5%リーダーに共通する様々なアクションやルールのうち、取り入れられそうな事項から少しずつ試してみていただくことが大切だと思います。そこから何かしらの学びを得ることは必ずできると思います。

佐藤 康行 弁護士法人フォーカスクライド 代表弁護士執筆者:佐藤 康行

佐藤 康行 弁護士法人フォーカスクライド 代表弁護士
2011年に弁護士登録以降、中小企業の予防法務・戦略法務に日々注力し、多数の顧問先企業を持つ。
中でも、人事労務(使用者側)、M&A支援を中心としており、労務問題については’’法廷闘争に発展する前に早期に解決する’’こと、M&Aにおいては’’M&A後の支援も見据えたトータルサポート’’をそれぞれ意識して、’’経営者目線での提案型’’のリーガルサービスを日々提供している。

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