”できるリーダー’’の習慣とは②(8つの行動ルール)

 さて、別稿【”できるリーダー”の習慣とは①】では、越川慎司氏の著書「AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣」(2021年8月20日出版)を題材として、AIが突き止めた「トップ5%リーダーの意外な特徴」を5つご紹介するとともに、逆に「95%リーダー」がよかれと思ってやってしまう行動習慣を6つご紹介させていただきました。

 これに引き続き、本稿では、同著書から、トップ5%リーダーが実践する『8つの行動ルール』をご紹介させていただきたいと思います。
 ※以下は、同著書を要約した内容です。

<トップ5%リーダーが実践する『8つの行動ルール』>(同著書「第3章」より)

①「やる気」をあてにしない!

→ トップ5%リーダーは、やる気に頼らずタスクを進める仕組みを確立しています。
 仕事を進める上では、メンバーが興味・関心を持たないことにも対応させないといけないからです。
→ 仕組の具体例
・やる気の有無にかかわらず作業を45分刻みにして、体力と精神が疲弊するのを防ぐ。
・メンバーに少し高いゴール(達成可能なギリギリの目標)を設定する。
 ※目標が低すぎると緩んでしまいますし、目標が高すぎると意欲が失せてしまいます。
・「進捗20%」というチェックポイントを設け、その時点でフィードバックをします。
 ※進捗20%で仕事を依頼した側と受けた側の認識のズレを補正できれば、その後の差し戻しや作り変えといった非効率な作業も減らすことができます。

②チームで解決する!

→ 「あなたの存在意義は何でしょうか」「あなたが会社で発揮すべき能力を理解していますか」という質問に、トップ5%リーダーの83%が即答しました。
→ 5%リーダーは、「どうやって組織を作っていくか」「どうやって課題を解決していくか」といった「HOW(=どうやって)」の考え方をまず捨てます。5%リーダーがまず考えるのは「WHY(=なぜ)」です。
 「なぜ私がこの組織のリーダーなのか」「なぜ私が必要なのか」といった会社や他者からの期待、そして「なぜこのことに取り組まなければいけないのか」といった意義や目的を起点にして考えていく傾向にあります。
→ リーダーが必要なのは、「チームで目標を達成するため」です。なぜチームが必要かというと、一人では解決できないからです。
→ 「チームで解決する」とはどういうことか。それは、メンバー個々人の強み、弱みを活かして、複雑な課題をスピード感をもって解決すること、つまり「1×1」を3や5にすることです。リーダーはまさにそういった効率と効果の最大化を目ざし、より少ない時間でより大きな成果を出すことが求められています。
→ 「短期で成果を出す」ではなく、「長期で成果を出し続ける」。これが、5%リーダーが組織の中で果たそうとしている役割なのです。

③異質を歓迎する!

→ 5%リーダーは、能力を掛け合わせてチーム力を底上げします。
→ トップ5%意外の管理職はタスクマネジメントにおいて、最も重視する点は何かという問いに対して、71%は「個々人の能力(ケイパビリティ)を重視する」と答えました。
 つまり、メンバーの強みにフォーカスしてしまう傾向が強く、強みに合わせて仕事を分け与えたり、タスクを割り振っていたりすることがわかりました。
 一方、5%リーダーは、メンバーの「できる・できない」を総合的に理解する能力が高く、先程の質問に対して、「メンバーの苦手なポイントをフォーカスする」と答えた方がなんと77%にも及んだのです。
 メンバーの強みを重視する一般的な管理職、一方、メンバーの弱みにフォーカスするトップ5%リーダー。
→ 「トップ5%リーダーは、なぜ弱みにフォーカスするのか」という質問に対する回答の中で特に名詞で多かったのが、「組み合わせ」「再配置」「入れ替え」「組み換え」「埋め合わせ」というワードです。
 つまり、トップ5%リーダーは何かの要素を掛けたり、変えたり、入れ替えようとしているのです。
→ そこで「弱みを補完するためにメンバーを把握し、弱みを補完するために能力の高い人の力を借りているのではないか」という仮説をトップ5%リーダーにヒアリングしたところ、意外にも彼らの答えは「NO」でした。
 彼らは業務処理能力が低い社員を優秀な社員で埋めようとしているのではなく、優秀な社員の弱みを理解して、そこを他のメンバーで補完しようとしていたのです。
 つまり、成果を出すメンバーの弱みを理解して、そこを他のメンバーで補完し、成果を出すメンバーの成果を2倍、3倍にしようと考えているのです。
 能力の低いメンバーをおざなりにしている訳ではありません。チーム内で優秀なメンバーの苦手なことを代わりにやってあげれば承認欲求も刺激され、自分の能力に気がついて発揮しようという気持ちが高まります。

④ストイックにならない!

→ 5%リーダーは、心と時間に余裕を作り、効率よく仕事を進めます。
→ 5%リーダーは、個人の業務遂行能力を磨くには限界があることを良く理解しています。そのため、自分が頑張っている姿をメンバーに見せて「ついてこい!」というリーダーシップではなく、正しい方向にメンバーを導くようなリーダーシップが求められます。
→ がむしゃらに仕事を進めるのはリスクであり、冷静かつスマートに重要な仕事にエネルギーを注ぎ込むことが成果につながると5%リーダーは心得ています。
→ 仮に汗水流して頑張っても、それを隠してメンバーに見せないようにしています。自分が頑張りすぎている姿をメンバーに見せるとむしろプレッシャーを与え委縮させてしまうからです。
→ メンバーに気軽に声を掛けられることをよしとする5%リーダーは、まず先に時間と精神の余裕を持つようにします。
 例えば、朝に音楽を聴いて自律神経を整えてイライラしないように心がけたり、散歩やランニングをする習慣を身につけ、有酸素運動することで自律神経を整えている5%リーダーも多くいました。
 朝意外でも、例えば定例会議は90分を75分に、60分を45分に圧縮することで、時間のバッファー(余裕)を生み、同時に精神的な余裕を生むようにしていました。

⑤根回しを構造化する!

→ トップ5%リーダーは、社内調整をパターン化して、さっさと終えます。
→ 5%リーダーは、うまく立ち回るために、社内のパワーバランスや出身、積極さ、社内人脈などを手帳やパワーポイントの資料にまとめ、どのように誰を巻き込んでいくかを構造化していました。
 「おい、聞いてないぞ!」と叫ぶモンスター管理職を説得させるために、相手に興味・関心を持っていることをアピールし、自己開示で相手の心を開かせるなどして、戦略的に根回しを行っていました。
→ 社内調整に苦労した部下からアドバイスを求められた際、一般的な管理職は、「あきらめずに頑張れよ!何かあったらいつでも言ってくれよな」と、励ましているのか逃げているのかわからない曖昧なアドバイスをします。
 5%リーダーは、根回しに必要な構造図やメモをメンバーに見せて具体的な対処策をアドバイスします。

⑥「伝える」ではなく「伝わる」を目指す!

→ トップ5%リーダーは、コミュニケーションのゴールを共感・共創と考えています。
→ 一般的な管理職がコミュニケーションで目指すのは「伝える」こと。それは、伝える側が主役の一方向のコミュニケーションです。相手が理解しているかよりも、自分の言いたいことが言えたかどうかが成功指標となります。
   一方、5%リーダーは、「伝わる」コミュニケーションを目ざします。それは、聞き手である相手が主役です。話を聞いてくれたかどうかではなく、中身を理解して行動してくれたかどうかが成功指標となっているのです。
→ ある製薬業の5%リーダーは、営業活動で質疑応答を重要視していました。顧客から質問があれば、「対話」が生まれ、「共感・共創」が生み出しやすくなると考えています。
 あるIT企業のオンライン定例セミナーを支援していたとき、質問数とセミナー後9カ月以内に発注数に相関関係が成立していることがわかりました。

⑦先にやめることを決める!

→ トップ5%リーダーは、「やめること」を決めて、新しいことにチャレンジします。
→ フランクリン・コヴィーの有名な「時間管理のマトリクス」は、緊急度も重要度も低いタスクに手を出していないか確認し(手を出している場合は撤廃し)、緊急度は高いが重要度が低いタスクをやめる勇気を持つことが本質的な目的です。
 このようなフレームワークを使った相対比較によって「やめるべきもの」を可視化し、やめることを決めていかないとタスクは積み上がり残業時間も増え続けます。
→ 5%リーダーは、何か新たなタスクが降ってきたり、新たな挑戦をしたりする際は、まず「やめること」を決めてから取り組んでいました。

⑧心と身体で聴く!

→ トップ5%リーダーは、うなずきのパリエーションが5つ以上あります。
→ 5%リーダーは、「間の作り方がうまい」ことがわかりました。メンバーが話しやすい環境を作っているのです。
 実際トップ5%リーダーの対話の様子を見ると、相手の話に被って話し始める回数が少ないことがわかりました。平均すると、1時間で発言が被る確率は一般的な管理職の4分の1以下でした。自分が話始める前に心の中で「うん」と一呼吸おいてから話す5%リーダーもいました。
→ 他方、リーダーとメンバーの両方を対象に1万8154人にアンケートをとったところ、3秒以上の沈黙は恐怖と捉えられることがわかりました。
 5%リーダーは、3秒以上の沈黙を作らないように、相手が話に詰まったときは助舟を出してあげたり、相づちやうなずきで時間をつないで相手に返答するなどの工夫を自然としていたのです。
→ 5%リーダーは、うなずきのバリエーションが多いことも特徴的でした。
 一般的な管理職は相手の話を聞くとき、「はい」「なるほど」など、うなずきのバリエーションは平均で2.5パターンでした。
 一方、5%リーダーは、「はい」「なるほど」「そうですね」「うん」「やっぱり」など、うなずきのバリエーションを平均で5.2パターン持ってうまく使い分けていました。

 以上が同著書「第3章」の要約です。
 個人的にはルール③と⑥が非常に参考になりました。とりわけ③のうち「業務処理能力が低い社員を優秀な社員で埋めようとしているのではなく、優秀な社員の弱みを理解して、そこを他のメンバーで補完しようとしていた」という箇所です。どうしても、チーム力を底上げしようと思うと、能力の低い社員に目が行きがちですが、能力の高い社員の弱みを、能力が低い社員の強みで補完させ、能力の高い社員の成果を2倍・3倍にするとともに、能力の低い承認欲求も満たすという方法は、一度試してみる価値があると思いました。

 当然のことですが、どの会社、どの業界であっても、トップ5%に入るようなリーダーは、トップ5%になってから行動が変わるのではなく、トップ5%になるための行動を継続したからこそトップ5%になったのです。
 私自身このことを忘れずに、トップ5%リーダーに共通する「行動のルール」を1つでも多く取り入れてみて、今日の行動を1つずつ変えていきたいと思います。

佐藤 康行 弁護士法人フォーカスクライド 代表弁護士執筆者:佐藤 康行

佐藤 康行 弁護士法人フォーカスクライド 代表弁護士
2011年に弁護士登録以降、中小企業の予防法務・戦略法務に日々注力し、多数の顧問先企業を持つ。
中でも、人事労務(使用者側)、M&A支援を中心としており、労務問題については’’法廷闘争に発展する前に早期に解決する’’こと、M&Aにおいては’’M&A後の支援も見据えたトータルサポート’’をそれぞれ意識して、’’経営者目線での提案型’’のリーガルサービスを日々提供している。

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