医療機関・クリニックにおける労務問題について(紛争段階編)

Medical Management

医療機関・クリニックにおける労務問題は、その他の業種に比べて特徴的な部分も多くあります。以下のような問題でお困りではありませんか?

  • 元職員から未払い残業代請求を受けている
  • 職員によるセクハラ、パワハラ被害の申告を受けている
  • 適切な就業規則を整備したい
  • 不規則な勤務体系のため、労務管理が追いついていない

労務問題は、既に何らかのトラブルが発生しているためこれを解決する紛争解決段階と、問題発生前に事前に防止策を講じる予防段階の2つに分けられます。ここでは、前者の紛争解決段階において、医療機関・クリニックで特に問題となりやすい事項についてご紹介します。

1. 未払い残業代請求に関する問題

医療機関・クリニックの場合、日常業務の多忙さや患者さんへの緊急対応を要する場合があることなどにより、勤務が長時間に及ぶ場合もあるかと思います。

その場合に問題となりやすいのが、未払い残業代問題です。

残業代は、基本的に雇用形態(正社員、パート、アルバイト等)にかかわらず、また医師・看護師・事務員などの職業にもかかわらず、労働基準法上の「労働者」に該当する場合は、原則として発生することになります。

この点、労働者とは、使用者から「使用されて労働し、賃金を支払われる者」とされており、①使用者の指揮監督下で労働に従事しているかどうか、②その労働の対価として賃金(報酬)を得ているかどうかを基準として判断されます。①の指揮監督下にあるか否かは、仕事の依頼・指示に対して応じるか拒否するかの自由があるかどうか(諾否の自由)、仕事の遂行方法や時間配分について指示を受けているかどうか(指揮監督)、仕事の開始・終了時間や勤務場所等が指定される形の拘束性があるかどうか(拘束性の有無)、本人に代わって他の者が仕事を行うことができるかどうか(代替性の有無)を考慮して判断されます。この点、医師が「労働者に該当するかどうか」ということが問題となりえます。医療機関やクリニックの中には、医師との間で雇用契約ではなく業務委託契約等を締結しているという場合もあると思いますが、契約の名称が雇用契約でなくとも、上述の判断基準に鑑みて、院長や上司からの仕事は拒否できない、決められた時間・場所で仕事をさせる、人員不足のため当該医師以外の医師に診療をまかせることができないといった事情がある場合、労働者と認定される可能性は高まります。

そうすると、長時間労働に従事していた医師が、医療機関・クリニックを退職した後に、自身は労働者であったということを主張して、非常に高額の残業代請求を求めてくるという可能性があります。

医療機関・クリニックが実際に残業代請求を受けた場合の問題に関しては、別稿にてご紹介します。

2. パワハラ・セクハラに関する問題

パワハラやセクハラというのは、明確にこれらに該当するといえる言動から、該当するとまで断言することは難しい言動までさまざまなものがあります。

パワハラは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」と定義付けされています(職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言(平成24年3月15日 職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議))。パワハラ該当性判断の難しいところは、「業務の適正な範囲」を超えるかどうかの線引きが容易でないことです。

セクハラは、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」(男女雇用機会均等法第11条1項)、「他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動」(人事院規則10-10第2条1号)などと定義されています。当該定義のうち、「性的な言動」には、例えば、性的な「発言」として、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報や噂を話すことなどが挙げられます。また、食事やデートを執拗に誘うこともこれにあたるとされています。性的な「行動」として、性的な関係を強要すること、必要なく身体へ接触すること、ヌード写真等を配布・掲示することなどが挙げられます。また、性別の役割分担意識に基づく言動、たとえば、「男のくせに根性がない」「女には仕事を任せられない」などと発言することも、上記人事院規則10-10によるとセクハラに該当するとされています。具体例をいくつか挙げてみましたが、最終的にセクハラに該当するかどうかの最も大きな要素は、受け手たる相手方がどのように受け止めるかにあります。そして、この相手方の受け止め方についても、相手方が拒否をしなかったことをもって、セクハラに該当しないとも言い難く、たとえその当時に合意が存在したとしても、相手方が後にセクハラ被害であると訴えた場合には、セクハラに該当するという可能性もありえます。

医療機関・クリニックの場合、狭いコミュニティを形成することも多くあると思いますが、そうするとパワハラ・セクハラ被害を受けた人は、誰にも相談できず、自身で抱え込んでしまうということがあり得ます。その結果、在職中に体調を崩し、退職後に加害者だけでなく医療機関・クリニックに対して損害賠償を求めたり、最悪のケースとして自ら命を絶ち、遺族からの損害賠償請求を受けるとともに社会的にも強い非難を浴びるというおそれもあります。

3. 当事務所でできること

医療機関・クリニックの労務問題は、以上の2つの問題に限らず、他にも数多く存在しますが、いずれの問題も放置すれば、民事上の損害賠償請求を受けるだけでなく、労基署からの指導・監督、社会からの強い非難を浴びることになり、閉院を余儀なくされるという最悪の事態も考えられます。

当事務所では、多数の医療機関・クリニックの顧問先様がおり、多忙な現場で発生する様々な労務問題に対して、適切かつ迅速に解決するための助言・サポートをさせていただいております。

既に紛争化してしまい対応に困っておられましたら、すぐに当事務所までご連絡ください。

pegetop