知的財産権に関する紛争の解決について

1.特許権や著作権等の知的財産権に関する紛争をかかえていませんか。

 「弊社で製造していた物について、他の企業から特許権侵害を主張された。」
 「弊社のホームページ上に掲載していた写真について、著作権者から著作権侵害を主張された。」

 経営を行っていると、特許権侵害、著作権侵害、商標権侵害、意匠権侵害を主張される等知的財産権に関する紛争に巻き込まれることがあります。 
 知的財産権者は、特許権、著作権法等それぞれの法律に基づき、その権利を侵害する第三者に対して、その使用の差止め、使用の結果製造された物等の廃棄請求、損害賠償請求を行うことができます(特許法第100条等)。
 企業が知的財産権に関する事前調査を怠ってしまい、事業がスタートしてから知的財産権侵害を主張され、前述した請求がなされた場合、適切な対応を行わなければ、当該事業を廃止せざるを得なくなるなど多大な影響を及ぼしてしまうことになります。
 今回は、万が一知的財産権に関する紛争に巻き込まれてしまった場合に、どのような対応を行い、解決に導くかについて、ご説明いたします。

2.初期対応はどのように行うべきか。

 相手方(以下では、権利侵害を主張する側を「相手方」、主張される側を「当方」と記載します。)がいきなり訴訟提起を行ってくる可能性もありますが、訴訟は時間と費用を要するものであることから、まずは書面(内容証明郵便による書面等)により知的財産権侵害の主張を行ってくることが多いです(仮に電話等の口頭で知的財産権侵害を主張された場合は、書面によって連絡をするよう要求すべきです。)。
 相手方から知的財産権侵害である旨主張された場合、当方は、概ね、以下の流れで対応することになります。

① 相手方の主張に関する事実の調査を行う:相手方は、当方に対して知的財産権侵害に該当する行為があると主張してきますので、まずは、その行為を当方が実際に行っているのか事実確認を行うこととなります。また、相手方が実際に当該の知的財産権を有しているのかについても確認する必要があります。
② 調査した事実に基づき、知的財産権侵害が生じているのか検討する:調査した事実関係に基づき、当方が、(ア)そもそも知的財産権に抵触する行為は行っていない、(イ)知的財産権に抵触するものの法律や契約に基づき適法な使用権を有する、(ウ)知的財産権に侵害してしまっている、のいずれに該当するのかという判断を行うことになります。従業員が無断盗用を認めた場合等、知的財産権侵害が明らかである場合を除いて、これらの判断は慎重に行う必要があります。知的財産権侵害の有無を判断した裁判例に関する知識を有する弁護士等と共同してその判断が必要となるでしょう。
③ 相手方に対して、知的財産権侵害を争う反論を行うか、示談交渉を行うかを決定する:調査の結果、上記(ア)(イ)に該当する場合は、相手方に対して、当方の反論を行うことになります。(ウ)の場合は、相手方に対して、示談交渉を申し入れることになると思われます。また、反論を行いつつも、早期解決を目指して示談交渉を行うこともあります。
  なお、裁判外交渉により相手方が当方の反論に納得したか、示談を成立させなければ、基本的には裁判手続きに進むことになると思われます(訴訟提起を行うのは相手方となりますので、相手方が訴訟提起を行うのを待つことになります。)。

3.紛争解決の方向性について

(1)解決の方向性

 交渉を一通り行った後になされる紛争解決の方向性としては、大別して、以下の3点になると考えます。

 ①当方による知的財産権侵害を認め、当方が侵害となる行為を中止する。
 ②相手方よりライセンスを受けて、事業を継続させる。
 ③相手方に対し、知的財産権の不行使を約束させる。
 
 なお、あまり見られませんが、本来当方が知的財産権を有するべきであったのに相手方が知的財産権を取得してしまっている(これを冒用といいます。)場合に、知的財産権の無償譲渡を受けるという解決を行う可能性もあります。

(2)合意書の作成、和解の成立

 紛争解決にあたり示談を行う場合、合意書をもって行う必要があります。合意書では、最低限以下の事項を定める必要があると考えられます。
 なお、裁判手続においては和解を行うこととなりますが、和解に際して作成される和解条項でも概ね同様の事項が記載されます。
 合意書によって紛争を解決する場合、適切な合意書を作成しなければ、当方が認識していた状態と異なる権利状態が生じてしまう可能性があります。そのため、合意書の作成に当たっては、経験を有する弁護士の関与が不可欠であるといえます。
 
 【合意書に最低限定める意向】
 ・当方が引き続き該当事業を継続するか否か
 ・事業を中止する場合には、中止を行う時期
 ・ライセンスを得る場合には、当該ライセンスの内容
 ・裁判手続を行っていた場合には、当該裁判手続の取下げを行うこと等の処理
 ・解決金が生じる場合には、当該解決金の額、支払方法
 ・口外禁止条項
 ・清算条項

 上記のうち口外禁止条項は、紛争の存在や示談内容を第三者に口外しないよう約するものとなります。紛争が存在していたこと自体が当方に他の場面で不利益な結果をもたらす可能性があるため、合意書には定めを置く必要があります。
 清算条項は、合意書に定めた事項以外の事項については全て清算を行うことを目的として定めます。清算条項が不十分であると、紛争の蒸し返しが生じてしまう可能性があり、示談にかけた労力や時間が無駄になってしまう可能性もあります。

4.知的財産に関する紛争の解決について、当事務所にお問合せください。

 当事務所では、知的財産権に関する紛争、裁判を取り扱っている弁護士が在籍しています。在籍弁護士は、今回ご説明したような知的財産権侵害を主張される側に立ったこともありますが、知的財産権侵害を主張する側に立ち、紛争を解決に導いた経験もあり、侵害を主張する側の観点も踏まえた対応を行うことが可能です。
 知的財産に関する紛争を終了させるまでには、法的観点からその侵害の有無を検討することはもちろんですが、該当事業の帰趨も決定する必要があることから、専門家である弁護士との綿密な協議が必要不可欠といえます。
 第三者から知的財産権侵害を主張されている、裁判を起こされたという経営者の方は、ぜひ当事務所にお問い合わせください。

藏野 時光 弁護士法人フォーカスクライド アソシエイト弁護士執筆者:藏野 時光

弁護士法人フォーカスクライド アソシエイト弁護士。2017年に弁護士登録。離婚問題等個人間の法的紛争から知的財産紛争等企業間の紛争まで幅広い分野に携わっている。また、刑事事件も取り扱う。紛争に関する交渉、訴訟対応のみならず、企業間取引における契約書等の作成・リーガルチェック等、企業における日々の業務に関する法的支援も多数取り扱っている。個人、企業問わず、クライアントが目指す利益を実現するために採るべき具体的方法を検討し、リスクに関する説明も交えた丁寧な説明を心がけ、リーガルサービスを提供している。

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