株主構成戦略構築

Right of Management Issues

1 中小企業の株主構成戦略とは

中小企業の株主構成はどうするべきか。企業の「資本政策」とも呼ばれるもので、非上場の中堅・中小企業においては安定した経営を実現する上で非常に重要な課題です。

別の記事でご説明したとおり、中小企業において機動的な意思決定を行うためには経営者が「経営権」を掌握することが必要です。このように、今、現時点において経営権を掌握することはもちろん重要ですが、資本政策を考える上では、将来にわたって当該会社の経営者が安定的に経営権を掌握し続けていくこと、という長期的な時間軸に立つことも重要です。

以下では、現在の課題と対策、将来にわたっての課題と対策、という二つの時間軸に立って、それぞれ資本政策のあり方をご説明します。

2 問題の先送りは百害あって一利なし

現時点で自身の保有する株式の割合が低く、単独で過半数や3分の2に届かないという経営者の方は、株式の集約を検討すべきです。また、大部分の株式を保有されている場合であっても、一部を少数株主が保有しており、少数株主との人間関係が希薄であったり、連絡が途絶えてしまっていたりする場合も同様です(分散した株式の集約や少数株主の締め出し手法については別の記事でご紹介しましたので、ここでのご説明は割愛させていただきます。)。

このような状況であっても、日常的な会社運営に支障が出ることはほとんどないため、多忙な経営者の皆様の多くは、その状況を放置してしまっておられます。しかし、経営権を掌握できていないことの影響は、思わぬところで生じるものなのです。

例えば、魅力的なM&Aのオファーがあった場合。一般的な買主は100%の株式取得を希望しますが、経営権を掌握できていない場合、M&Aが実現できるかどうかは他の株主の意向次第となってしまいます。

また、事業承継を見据えて後継者候補を役員に選任しようとする場合。古参社員や古くからの取引先などが株式を保有しており、経営者が議決権の過半数を保有できていないと、経営者の意向に沿った後継者選びすらままならないことになります。

さらには、分散した株式を放置した結果、株主に相続が発生することで、株式の分散がねずみ算式に進んでしまい、収拾がつかなくなってしまったケースも珍しくありません。

このように、株式の分散の問題を先送りすることは、百害あって一利なしですので、速やかに対策を講ずる必要があるのです。

3 将来の経営の安定のために

次に、現時点では経営者が経営権を掌握している、というケースを考えてみましょう。

中小企業の資本政策を考える上では、既述のとおり、現時点で安定していればよい、という近視眼的な考え方だけでは危険と言えます。将来にわたって経営者が安定的に経営権を掌握していく、という中長期的な視点が不可欠なのです。

資本政策を中長期的視点から考える場合に検討すべきポイントは、経営者が現在保有している株式を次世代に確実に承継していくことと、株式が分散しないよう対策を講じておくこと、という2点です。

(1)次世代への確実な承継

現時点で100%かそれに近い議決権を保有されている経営者の方であれば、その株式を後継者に確実に承継することを考えればよいことになります。仮に、生前に何も準備をしないでご相続が発生した場合、相続人間での遺産分割協議が必要となり、その結果、株式が分散してしまう可能性があります。

そこで、最低限実施しておくべき対策が、保有する株式のすべてを後継者1名に相続させるという遺言を作成していただくことです。遺言があれば、遺産分割協議が省略できますので、確実に特定の後継者に株式を承継することができます。

一方、現経営者が亡くなるまで株式が移転しないということは、現経営者から後継者への究極的な経営権の移転が、それまで行われないということになります。中小企業においては、代表取締役に就任するだけでなく、経営の基盤となる株式も承継してこそ、真に経営権を引き継いだと言えることになります。現経営者がお元気なうちに、代表取締役の地位と株式をセットで移転することが円滑な事業承継の成功条件となりますので、株式については、相続による承継ではなく、生前の承継を検討すべきです。

生前に株式を承継する方法は、譲渡(売買)か贈与のいずれかとなります(信託のご紹介は割愛します。)。子や甥姪といった親族への承継であれば贈与、役員・従業員や第三者への承継であれば譲渡(売買)が用いられることが多く、贈与の場合は税負担、譲渡の場合は買取資金の調達が課題となるものの、株式の確実かつ円滑な移転が可能ですので、事業承継には最適な方法と言えます。

このように、生前に株式を移転していただくことが、事業承継に伴う株式の分散を防止するために最も有効な方法なのですが、遺言及び贈与を行う場合には、後継者以外の相続人の遺留分に注意してください。例えば、相続人が子2人のみで一方が後継者の場合、非後継者の相続人には、遺留分として相続財産の4分の1に相当する財産を取得する権利があり、近年の民法改正により、財産を取得した相続人に対して金銭の支払いを請求できることとなっています。

遺留分の問題は、直接的に株式の分散を引き起こすことはありませんが、遺留分に配慮したためにかえって株式を分散して相続させてしまうなど、間接的に分散につながることもあり得ますので、必ず弁護士に相談してください。

(2)分散防止

上記でご紹介した生前に承継してしまう方法のほか、将来にわたって株式の分散を防止するために、以下の方法がありますので、要点をご紹介します(詳細は、別の記事をご参照ください。)。

ア 役員/従業員持株会制度の導入

既に役員や従業員が株式を保有している場合や、福利厚生・モチベーション向上のために役員や従業員に株式を保有させたい場合には、持株会制度の導入が有効です。持株会であれば、退職時や死亡時に保有する株式を買い取ることができますので、分散防止に役立ちます。

イ 相続人等に対する売渡請求

現時点で、少数株主が存在するものの、買取りに応じてもらえない場合や、買取りを提案しにくい場合には、会社の定款に、次のような定めを設けましょう(まずは、自社の定款に同様の定めがあるかどうか、確認してください。)。

第●条 当社は、相続その他の一般承継により当社の株式を取得した者に対し、当該株式を当社に売り渡すことを請求することができる。

この規定がある会社において、株主に相続があった場合、会社は株主総会の特別決議を経て、相続人に対して、相続により取得した株式を会社に売り渡すよう請求することができ、これにより分散を防止し、同時に株式の集約を図ることが可能なのです。

なお、同社において、大株主である経営者に相続があった場合には、少数株主が上記の特別決議を経て(買取請求の相手方となる経営者の相続人は、当該株主総会で議決権を行使することができません。)、株式を買い取ってしまうことで、会社の乗っ取りが可能であるというリスクがあります。このリスクの回避方法については、弁護士にご相談ください。

ウ 株式の譲渡制限

最後に、このような中小企業はほとんど存在しないと思いますが、もし株式に譲渡制限を付していない場合は、株主が自由に、第三者に株式を譲渡することができ、株式が容易に分散してしまいます。もし自社の株式に譲渡制限が付されていない場合には、速やかに定款変更・登記手続きをとってください。

4.当事務所でできること

以上ご紹介したとおり、現在の経営権の掌握と、将来にわたっての安定的な経営の維持のためには、早期の対応が必要となります。対応が遅れれば遅れるほど、選択肢は狭まり、リスクは高まりますので、重要かつ至急の経営課題とご認識いただければと思います。

当事務所は、株式の集約や持株会制度の導入、円滑な事業承継対策など、中小企業の資本政策に関して多様な経験を有しておりますので、是非ご相談ください。

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