IPO法務体制構築コンサルティング

IPO

1.はじめに

IPOをするためには、内部管理体制の構築やガバナンスの整備など、法務面でも上場会社と同水準の対応が求められます。

そして、上場審査においては、これら法務面の問題により上場承認が降りないケースも非常に多いです。
そこで、本稿では、上場準備会社において特に問題となる法務的な論点の概要とその重要性についてご説明します。

2.上場審査において問題となりやすい法的論点

以下では、上場審査において特に問題となりやすいいくつかの論点について概要をご紹介します。

(1)業務の適法性

当然ながら、上場準会社の実施する事業は適法に行われる必要があります。

具体的にどの法令が適用されるかについては、業種によりまちまちですが、一般的には、許認可が必要な事業ではないか、下請法や表示広告規制関連の法令(景品表示法や薬機法など)に抵触しないか、個人情報の管理を適切に行なっているか等が問題となるケースが多いです。

上場会社で同種の事業を行なっておらず、かつ規制の外縁がはっきりしていないような場合には、特に厳しく審査されることになります。
また、実際に法令違反を行なってしまったり、これに基づく行政指導を受けてしまったりしたような場合、その内容によっては大幅にスケジュールが遅延したりそもそも上場が実質ほぼ不可能となってしまうような事態にもなりかねませんので、事前に業務を適法に実施することができるような体制・運用を整えておくことが非常に重要です。

(2)株主・株式関連

上場審査において、株主構成や株式の発行等の履歴は非常に細かく審査されることになります。

株式の異動の履歴や、各株式の発行手続等の適法性がチェックの対象になるほか、上場直前期などにおける株式等の発行については、いわゆる公開前規制(※)との関係でも問題になることが多いです。
※ 上場直前の会社の株式の割当を受けた者が上場により短期的な利益を得ることを防止するために証券取引所が課している、上場後一定期間当該割当株式を継続保有しなければならないという規制です。

 (3)組織関連

株主総会を始めとした会社の重要機関の議事録については、最低限直近2年分はかなり細かく精査されることになります。

その中でそれ以前にも繋がるような重大な論点が見つかった場合には、創業当初からの議事録の確認を求められるケースも少なくありません。
また、かならずしも法的な論点というわけではありませんが、どのような方を役員として選任するかも重要なポイントです。特に社外役員については、当該役員の有する資格や経歴についても重要な判断ポイントとなります。

(4)M&A

上場前に自らが買い側となるM&Aを実施する場合には留意が必要です。

特に連結子会社や持分法適用会社が生まれるようなM&Aの場合、審査の対象がそれらの会社にも及ぶことになりますので、上場審査における論点が増加することになります。また、当該会社を子会社化等したことに伴う重大なリスクを回避するために、M&Aをする場合には、当該会社に対する十分な財務・法務のDD等を実施することが必須となります。

加えて、もしこれらの会社が外国会社であるような場合には、当該外国における法令遵守も必要になりますので、審査のハードルや審査に係るコストは大きく上がる可能性があります。
もちろん、会社を成長させるM&Aのチャンスを上場準備のみを理由にしてみすみす逃す必要はありませんが、上記のような上場審査上の影響が生じることを理解したうえで適切なM&Aを実施することが重要です。

(5)関連当事者取引等

上場準備会社においては、関連当事者(会社と一定の関係値にある当事者との取引)を原則として解消する必要があります。
また、実務上、代表取締役が他の会社の代表取締役を兼任している場合には、(100%子会社の代表取締役との兼任を除き)解消を求められることが多いです。

 スタートアップにおいては、主要株主が経営する会社との取引が主要取引になっているケースや、代表取締役が複数の会社を経営しているというケースが少なくありませんので、早期からこの点を意識した体制を整えていくことや株主や役員を含むステークホルダーとの間での共通認識を醸成していく必要があります。

 (6)資本政策等

資本政策で失敗をしているケースは非常に多いです。

例えば、創業者間で何の合意もなく株式を持ち合ってしまった結果、創業者間の意見が食い違った際に身動きがとれなくなってしまうケースや、一方的な投資契約を締結させられてしまった結果、機動的な経営が妨げられたり、上場時期の延期により高額での株式の買戻しを求められたりするケースがあります。

 役職員等へのストックオプションについても注意が必要で、税制適格の要件や開示規制に関する例外規定の要件を満たさないような発行を行なってしまった結果、税制上の優遇措置を受けることができない、未上場会社なのに有価証券報告書提出会社となってしまった等のトラブルも生じていますので、手続きに精通した専門家への相談が必須といえます。

 (7)知的財産権

各知的財産権については、事業上重要なものについては、権利を確保しておくことが重要です。

特に、上場審査上論点となりやすいのは、著作権に関する事項です。
メディアを運用しているような会社などを中心として、第三者の著作権を侵害していないこと、侵害することのないような体制を整えていることは、重要なポイントになります。 

(8)人事労務

適切な人事労務関連規程の整備、必要な届出の実施等のほか、割増賃金の適切な支払等が問題となることが多いです。

割増賃金の支払については、労働時間の把握が適切にできているか、名ばかり管理監督者は存在しないか等複数の論点が存在するところであり、特に問題となりやすい点です。
 万が一重大な労務紛争が発生してしまった場合には、上場審査の基準に抵触するものとしてスケジュールが大幅にずれ込む可能性がありますので、人事労務に関する対応は非常に重要です。

3.当事務所にご依頼いただくメリット

以上のとおり、上場準備にあたっては、数多くの法的な論点が発生します。

当事務所では、数多くの上場準備会社をサポートしてきた経験をもとに、上記の各論点に関する適時適切なアドバイスが可能です。
IPOをお考えの場合には、お気軽に当事務所にご相談ください。

櫻井 康憲 弁護士法人フォーカスクライド パートナー弁護士執筆者:櫻井 康憲

弁護士法人フォーカスクライド パートナー弁護士。
2016年に弁護士登録以降、上場直前期の企業のサポートに注力し、複数の企業の上場案件に関与した実績を有する。早期から弁護士との適切なコミュニケーションを行うことを通じて、必要最小限のコストで最大限の効果を発揮する予防法務の提供を実現するため、現在はスタートアップや上場準備会社を中心にコストを抑えてスタートできる顧問サービスの提供を行っている。

 

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