ホールディングス法務体制構築コンサルティング

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近年、日本市場において持株会社がIPOする事例が徐々に増加しています。

IPOのためだけに持株会社化を検討する企業はほとんどないと思われますが、持株会社化を検討している企業がIPOも目指しているようなケースでは、持株会社化することのメリット及び留意すべき点を十分に把握したうえで判断することが重要です。

そこで、本稿では、持株会社体制に移行して当該持株会社をIPOさせることのメリットと留意点を整理してご説明します。

1 メリット

(1)上場後と比較して持株会社体制への移行がしやすいこと

持株会社体制に移行するための手法は種々ありますが、どの手法によるとしても株主総会決議等の手続きが避けられません。

そのため、上場企業が上場後に持株会社体制に移行しようとする場合、機関投資家や海外投資家も含む不特定多数の株主に対してその必要性等を説明して承諾を得なければなりません。また、上場会社には金融商品取引法に基づく規制や証券取引所の規則に基づく規制の適用があるため、これらの規制にも対応する必要があります。

具体的には、インサイダー規制に抵触しないよう持株会社体制への移行に関する情報を厳重に管理しなければならないほか、開示手続等の事務的な対応も多く発生します。

非上場会社であっても持株会社体制へ移行する場合には株主総会決議等の一定の手続きは必要です。しかしながら、上場会社と比較すると未だ株主数が少なく、かつその属性も創業者や比較的創業者と近い関係にある者が多いことから、株主への説明はしやすいことが多いでしょう。

また、金融商品取引法に基づく規制や証券取引所の規則に基づく規制の適用がないため、上場後に持株会社体制に移行する場合と比較すると対応すべき規制や事務的な負担が少ないといえます。

(2)上場審査時や上場後に求められる経営体制の整備にスムーズに取り組めること

一般的に、持株会社体制に移行する際には、将来的な経営計画を作成し、それに基づき適した組織設計や関係会社の管理等について検討を行うことになります。

これは、上場審査時や上場後に求められる内部管理体制の構築やガバナンスの整備と必ずしも一致するわけではないものの、ある程度共通部分も存在します。

持株会社体制への移行を通して経営管理体制は一定程度強化されることが見込まれますので、上場審査時や上場後に求められる内部管理体制の構築やガバナンスの整備にも比較的スムーズに取り組むことが可能と思われますので、この点が持株会社体制への移行のメリットの一つとして挙げられます。

(3)従業員のモチベーションを高める材料として利用可能なこと

持株会社体制への移行は、従業員にとっては業務上の営業施策等と比べてその意義が分かりにくく、持株会社設立後においても、その成果を実感しにくいものです。

他方で、IPOは従業員に大きな負荷がかかるものの、上場企業になるという分かりやすい目標があり、従業員にとってモチベーションを高める要素の一つとなることが多いと思われます。

そのため、持株会社化をIPO準備の過程で重要な施策の1つと位置付けることにより、事務的負担も大きい持株会社体制への移行について、従業員にポジティブに捉えてもらうことができ、むしろモチベーションを高める材料の一つとして利用することが可能です。

2 留意すべき点

(1)持株会社体制への移行に時間がかかること

持株会社を上場させる場合、当該持株会社を審査の対象にすることになりますので、少なくとも上場申請の2期前までには持株会社体制への移行を済ませておく必要があります。

会社の状況にもよりますが、登記手続きまで含めた持株会社体制への移行手続も相応の時間を要しますので、かなり余裕を持ったスケジューリングが求められます。

特に、すでに上場準備に入り、証券会社等と上場までのスケジュールを立てているような場合には、当該スケジュールが大幅にずれる可能性があるため、持株会社体制へ移行するメリットとスケジュールがずれることのデメリットを慎重に比較検討する必要があります。

(2)事務的負担が大きくなること

一般的に、非上場企業の場合には、人員面で上場企業と比較するとリソースが少ないことが多いです。特に管理部門は必要最小限の人数で業務を行っていることが多いため、持株会社体制への移行を行う場合、管理部門を含めた従業員に相応の負担が生じます。また、上場準備においても管理部門の果たす役割は大きく、長期的に負担が生じます。

そのため、持株会社体制への移行を行い、さらに続けて上場準備ということになると、かなりの長期間管理部門を中心とした従業員に大きな負担がのしかかることになります。

例えば、管理部門の要職に負担が集中し、上場準備の過程で当該従業員が退職してしまったような場合には、上場審査上マイナスに評価される可能性が高いため、持株会社体制への移行と上場準備を連続して又は並行して行う場合には、十分な人員の確保ないし余裕を持ったスケジューリングが非常に重要となります。 

(3)早期に上場準備を見据えた論点を検討する必要が生じること

持株会社体制への移行後に上場準備を行うという関係上、当初の持株会社化の段階で、上場準備を見据えた論点の整理が必要となります。

具体的には、上場審査の基準を踏まえると、社外役員等の確保や関連当事者等との取引の整理が必要となります。また、持株会社に紐づく各子会社が実質的な審査の対象となりますので、例えば複数の会社をぶら下げることを想定している場合には、どの会社を当該持株会社の傘下に置くべきか否かという点も考慮が必要となります。

持株会社化の時点で、必ずしも上記の点すべてがクリアされていないといけないというわけではありませんが、上場準備中に整理しなければならないポイントであり、かつ持株会社体制に移行した後では対応に時間を要する事項も存在するため、留意が必要です。

3 当事務所でできること

以上のとおり、持株会社体制に移行して当該持株会社をIPOさせることには、一定のメリットが存在する一方で、時間や人員面の制約が大きく、早い段階で論点整理が必要という留意すべき点もあります。

いずれがよいかについては必ずしも正解があるわけではありませんが、持株会社体制への移行をお考えの場合には、会社の状況を前提に、持株会社体制への移行によるメリットと留意点を総合的に判断して、慎重に判断をする必要があります。

当事務所では、持株会社体制化の目的や会社の状況を踏まえて、持株会社体制への移行をすべきか否かにつき適切な助言をさせていただくことが可能です。

持株会社体制への移行と上場準備をともにお考えの場合には、お気軽に当事務所にご相談ください。

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