問題のある従業員対応に苦しんでいませんか②(素行不良編)

Labor Issues

1 こんな問題のある従業員の対応で苦しんでいませんか?

 ・職場内で従業員同士による不倫が発覚した
 ・従業員が不適切な言動をSNSに投稿した

 従業員は,様々な性格や性質を有しており,それを入社面接の段階で全てを把握しておくおとは困難です。その性格や性質が,入社後に明らかになり,会社にとってプラスに働くことで,業務が円滑に進むこともあれば,逆にマイナスに働くことで問題行動が発生するという可能性もあります。

ここでは,従業員による問題行動が発覚した場合について,会社がどのように対応する必要があるかについてご紹介します。

 2 従業員による不倫が発覚した場合

不倫とは,一般的に妻又は夫という配偶者のいる者が,配偶者以外の者と性的関係・交際関係をもつことをいいますが,ここでは,性的関係を持つ場合に限定してお話します。この場合の不倫は,配偶者に対する不法行為(民法709条)を構成し,不倫をされた配偶者は,不倫をした配偶者とその不倫相手に対して,損害賠償請求(慰謝料請求)をすることが可能です。

そのため,会社としては,不倫が発覚した段階で,当人らに対して不倫関係を解消させるだけでなく,違法な行為であるということで懲戒処分に付すという対応を取ってしまうということがあります。

しかし,上記のような損害賠償請求の問題はあくまでも夫婦間の問題,すなわち,会社との関係では従業員のプライベートな領域での問題になります。すなわち,会社としては,基本的に,業務命令によって不倫関係を解消することは求めることができず,不倫関係にあった従業員に対し懲戒処分を行ったとしても,当該処分が後に裁判で無効と判断される可能性があります。

もっとも,職場内での不倫に対する懲戒処分が常に無効となるものでもなく,具体的に企業秩序に対する悪影響が及ぶといったケースでは,懲戒処分が有効であると判断されることもありえます。この点,過去に裁判で問題となった事案としては,妻子のいる高校教師が,教え子である女子高生と公然と交際した上に,卒業後に肉体関係を持つに至ったということから,教育委員会が懲戒免職処分という非常に重い処分を下したという事案があります。当該事案では,教師という当事者の職務上の立場・責任に鑑みて,反倫理性が著しく高いことから,当該懲戒免職処分という重い処分をも有効と判断されました。

したがって,職場内での不倫が発覚した場合の会社の対応としては,事実関係の確認と,従業員らに対する注意・指導を行うとともに,ただちに懲戒処分を下すのではなく,当該不倫関係が具体的にどのように,どの程度,会社の秩序・職場環境に影響を及ぼしているかという事例と証拠を収集したうえで,関係解消のための最終的な手段として懲戒処分を下すというプロセスを経る必要があります。

 3 従業員が不適切な言動をSNSに投稿した場合

SNSの利用者が増加するにつれて,会社は,従業員によるSNSにまつわるトラブルが発生するリスクを抱えることになりました。

この点,業務時間外の投稿は,前述の従業員同士の不倫のケース同様,プライベートな領域ですので,原則として懲戒処分の内容とはなりえません。もっとも,投稿内容次第では,業務との関連性を有することから懲戒処分の対象となり得ます。具体的には以下の3つのような場合が考えられます。

一つ目は,企業秘密の漏洩に当たる場合です,企業秘密の流出は,会社の競争力を低下させ,会社の信用にもかかわることから,従業員が守秘義務に違反して企業秘密を漏洩し,会社に損害を生じさせた場合などには懲戒処分の対象となり得ます。二つ目は,会社の誹謗・中傷といえる場合です。従業員は,雇用契約に付随する義務として誠実義務を負っていますので,投稿内容が会社に対する否定的内容であって,これによって会社の社会的評価が害される場合には,名誉若しくは信用を毀損する行為として懲戒処分の対象となり得ます。三つ目は,その他の会社の社会的評価を毀損するような内容の投稿です。例えば,飲食店の従業員が業務用冷蔵庫内に入った様子の写真を投稿したようなケースや,私生活上の違法行為を投稿したところ,身元が特定されて,勤務先である会社が非難の対象となるというケースが考えられます。このような場合でも会社の信用を毀損する行為として懲戒処分の対象となりえます。

会社側にて,上記のような従業員による不適切な投稿が発見された場合の基本的な対応方法は以下のとおりです。

① 証拠保全
まずは,当該投稿内容が削除される前に,プリントアウトやスクリーンショット等により,証拠として保存しておく必要があります。

② 投稿者の特定
発信者の特定を必要があります。仮に匿名での投稿であったとしても,他の投稿の内容や交友関係,その他の情報等の断片的な情報を組み合わせることで,発信者を特定することができるという場合がよくあります。

③ 投稿者として特定した従業員からの事情聴取
投稿者として特定した従業員に対し,投稿の事実について確認し,投稿に至った経緯等について事情聴取を行います。

④ 削除依頼,削除命令の検討
投稿者に対し,任意で当該削除を投稿するように依頼します。これに応じない場合,業務命令として削除を求めることが考えられます(削除命令)。もっとも,削除できる範囲は,当該問題となっている投稿のみであり,アカウント自体の削除となると過度にプライベートに介入することとなり認められないと考えられます。

⑤ 懲戒処分,損害賠償請求,刑事告発等の検討
企業秘密の漏洩の場合,当該企業秘密の重要性,開示の目的,漏洩による会社の損害の有無・程度,企業運営への影響等を総合的に考慮し,企業にとって重要な情報で,かつ背信性が高いと認められる場合には,懲戒解雇を検討することになります。会社の誹謗中傷についても,その内容の真実性若しくは真実相当性,目的,手段・態様の相当性,それによって害された会社の社会的信用・評価の程度などを考慮して,懲戒処分の重さを検討することになります。また,企業秘密漏洩や会社の誹謗中傷に当たらない投稿であっても会社の名誉,信用を毀損するような不適切な投稿がなされた場合には,懲戒による対応を検討すべきです。

また,投稿内容の重大性や会社の被った損害の大きさによっては,当該従業員に対する損害賠償請求や名誉毀損・侮辱罪ないし業務妨害罪などで刑事告訴・告発をすることも考えられます。

 4 問題行動の防止措置

従業員間の不倫関係のケースでもSNSでの不適切投稿のケースでも,事前に研修等にて当該行動自体の問題点や業務・会社への影響を周知,理解させることが重要となります。特に,SNSでの不適切投稿に関しては,国としても国家公務員のSNSでの言動が問題となったことから,平成25年6月「国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たっての留意点」が公表され,各会社においても,SNSの使用について就業規則へ条項を追加したり,ガイドラインの策定を進めるということが多くあります。また,会社としては,SNSへの投稿によるトラブルが生じた際のリスクに鑑みて,あらかじめ従業員に誓約書を取得しておくことも考えられます。

 5 当事務所でできること

従業員の私生活における素行不良に起因するトラブルの多くは,採用時に予測しておくことは困難であり,実際に発生した場合に対応せざるを得ない場合が大半です。そのような場合に,適切なヒアリングを実施しないまま,拙速に懲戒処分を下すなどにより,問題行動に対する対応だけでなく,当該加害従業員による懲戒処分の無効を理由とする紛争への対応という二次被害が生じる場合があります。

当事務所では,そのような二次被害が出ないよう,適切かつ迅速にアドバイスを提供させていただき,被害を最小限に食い止めるようにサポートをさせていただきます。また,従業員による問題対応が発生した場合の対応について,事前に被害を最小限に食い止めるための組織体制の構築や制度設計に関しても,対応をさせていただいております。

 実際に問題が起こっている企業様も,今度どのような組織づくりをしようかと検討されている企業様も,是非一度お気軽にご相談ください。

 

 

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